ルドルフ1世 (ドイツ王)

ルドルフ1世は、ハプスブルク家初の「ドイツ王」であり、中世ドイツの歴史において重要な転換点をもたらした人物である。

帝位を巡る大空位時代を終結させ、ハプスブルク家の基盤を築いた。彼の治世は皇帝権の再興とハプスブルク家の領土拡大に焦点が当てられた。

※「ドイツ王」は、神聖ローマ皇帝の候補者として選出された君主の称号であり、教皇による戴冠を経て正式な皇帝となる。ルドルフ1世は戴冠を受けなかったため、「正式な皇帝」とはならなかった

基本情報

人物の背景

ルドルフ1世は、ハプスブルク伯アルブレヒト4世の長男として生まれた。彼は小領主の地位から這い上がり、1273年に選帝侯たちによってドイツ王に選出される。

だが、その地位は脆弱であり、ボヘミア王オタカル2世の挑戦を受けることとなる。

1278年の「マルヒフェルトの戦い」でルドルフは奇襲作戦を用いてオタカル2世を討ち取り、オーストリアを没収し自領に加えた。これは後のハプスブルク家繁栄の礎となった。

彼はまた、庶民の支持を得るために民衆と積極的に交流し、ジョッキを掲げるなど、親しみやすい振る舞いで知られていた。

治世で起きた主要な出来事

• 大空位時代の終焉（1273年）
  神聖ローマ皇帝が長らく不在だった時代に終止符を打ち、帝国の新たな秩序を構築するための第一歩を踏み出した。

• イタリア政策の放棄
  ルドルフ1世は神聖ローマ皇帝としての正式な戴冠を目指さず、イタリア遠征を行わなかった。これは、ドイツ内の統治とハプスブルク家の領土拡大を優先したためである。

• マルヒフェルトの戦い（1278年）
  ボヘミア王オタカル2世との対立が激化し、ついに戦争に発展。ルドルフ1世はハンガリー王の支援を得てオタカル2世を討ち取り、オーストリアをハプスブルク家の領地とした。

• ハプスブルク家のオーストリア支配
  マルヒフェルトの戦いの勝利により、ルドルフ1世はオーストリアを正式に支配下に置いた。これが後のハプスブルク帝国の起点となった。

• 帝位の世襲化に失敗（1291年）
  晩年、彼は息子アルブレヒト1世に帝位を継承させようと試みたが、ドイツ諸侯の反発により成功しなかった。その結果、帝位はナッサウ家のアドルフが継ぐこととなり、ハプスブルク家の皇帝位世襲は後の時代に持ち越された。